みんなで歌おうよ② Iさんのこと


守屋真実

もりや・まみ ドイツ在住27年。ドイツ語教師、障がい児指導員、広島被ばく2世。父は元千代田火災勤務の守屋和郎氏 


 

5月は忙しかった。恒例の反原連官邸前抗議と19日行動に加えて、メーデー、憲法集会があり、まだ消費増税ストップ中央集会、辺野古埋め立て反対国会包囲行動と続く。身体が二つ欲しい。おまけに、官邸前にいつも和太鼓を持って参加しているIさんから、11日の川崎市幸区のピースパレードに誘われた。Iさんは、いつも赤銅色に日焼けして、太鼓の装束がぴったり似合う粋なおじさんだ。面白そうなのでお誘いに応じた。

 「ピースパレードinさいわい」は、2015年に当時の戦争法案に反対して始まったそうだ。今回で7回目になる。川崎駅近くの公園に集合し、主催者挨拶、野党市議等のスピーチの後、私が三曲歌い、パレード出発。「憲法変えるな、総理が変われ」、「10%の増税反対」、「選挙に行こう、政治を変えよう」などとコールし、3000万署名の協力を呼びかけ、合い間に「一人の手」を歌いながら60数名で鹿島田駅まで楽しく歩いた。マンションのベランダや商店の中から手を振ってくれる人も多く、地域に根ざした活動であることが感じられた。

 小規模とは言え、このような企画を実行し、継続するのは大変なことだ。岩をも動かす大河も、元は湧水の小さな流れだ。こういう市民の根強い運動にこそ未来がある。Iさんは、地域では太鼓集団を主催し、子供食堂もやっているという。当日はパレードをリードしながら、参加者の体調に気を配ったり、エネルギッシュに活動しておられた。脱帽!

 そもそもIさんと知り合ったのは、民謡調の反原発ソング「水に流すな」を歌ってみたくて、太鼓のコラボをお願いしたのがきっかけだった。初めて行った川崎は、想像していた昔の工業地帯とはかけ離れた、明るくお洒落な都市だったし、遠くてなかなかいけないと思っていた旧陸軍登戸研究所跡も意外と行きやすいことがわかった。一つの出会いが世界を広げ、同時に、遠い所が近くなる。だから集会通いは楽しくて止められない。

 

 みなさんも時にはスマホから顔をあげて、近くの誰かに話しかけてみませんか。