みんなで歌おうよ


守屋真実

もりや・まみ ドイツ在住27年。ドイツ語教師、障がい児指導員、広島被ばく2世。父は元千代田火災勤務の守屋和郎氏 


 

 安物のギターを抱えて毎週金曜日、首相官邸前や国会正門前、経産省前テント広場などで、平和の歌や原発に反対する歌を歌っている。 

 私が子供の頃、父が全損保の専従をしていた。狭い社宅の我が家には、頻繁に組合の人たちが訪れ、すし詰めになって語り、笑い、歌っていた。きっと職場では組合員差別や嫌がらせなど、辛いこともたくさんあったのだろうが、そんなことを微塵も感じさせないほど明るく、たくましく、いつも歌っていた。 

 あれから半世紀余りが過ぎ、その内の27年をドイツで過ごした私は、現代の日本人がみんなで歌う習慣をなくしたことに驚いている。 原因の一つには、社会が豊かになり、趣味や娯楽が多様化したことが挙げられるだろうが、余暇活動に格差が生じたことも大きな要因ではないかと私は思っている。 

 70年代後半にカラオケが普及し、集団で歌うより、ソロやデュエットが普通になった。しかもその歌を機械が採点したりする。余暇の領域でも数値で「評定」し合うようになったのだ。日本人は研究熱心で凝り性な人が多い。それは悪いことではないが、頻繁にカラオケ店に行ったり、自宅に機材を揃えたり、レッスンを受けたりできる人、つまり、お金と時間の余裕がある人が上達し、そうでない人々が取り残され、分断されて行ったのではないだろうか。 私の歌は素人だし、ギターも下手くそなのだが、そのせいか、特別上手くないけれど歌が好きという人達が遠慮せずに集まってくれる。私には、それが嬉しい。 働く人々の暮らしを守らず、平和憲法を壊そうとする政治を終わらせるためには、私たち市民が力を合わせなければならない。

 上手下手に関わらず、みんなが声を合わせて歌う習慣を取り戻した時、平和や人権を守る運動も大きく強くなるだろう。 

 見かけたら一緒に歌ってくださいね。