二宮さんと安倍さんの違い


落語作家・笑工房代表 小林康二


  江戸時代後半、二宮金次郎が疲弊していた六百カ村の経済を立て直した根本思想は「君ありて、のち民あるにあらず、民ありて、のち君おこる」(報徳訓)だ。彼が小田原藩主・大久保忠真(ただざね)の命を受けて着任した桜町三カ村は、年貢に加えばくちの借金で農地を失うなど農民の生活は荒れ放題だった。

 

 今、わが国のギャンブル依存者は320万人、男性6.7%、女性0.6%と諸外国の1%前後に比べ最悪だ(2017年)。にもかかわらず、国は「税収増へIR(統合リゾート型カジノ)を開設」すると決めた。

 

 とばく場は最初から客が損をして、胴元がもうかるように設計してある。古今東西ギャンブルは人心を蝕み、生活を荒廃させ、地域経済を破壊する。一例が、カジノで106億円の負債を抱え特別背任で逮捕された大王製紙元社長事件だ。

 

 そもそも「日本にカジノを」の発想は、米カジノ経営者がギャンブル大国の日本は「空から雨みたいに円が降ってくる」と、トランプ米大統領を通して安倍晋三総理に圧力を加えたのが決定打だ。そのもうけは米カジノ運営会社が70%、残り30%を日本政府と自治体で折半するのだ。

 

 金次郎は「国家を富ませたいと思う者は、住民の勤功に国の財貨を与えよ」(報徳訓)と説き、ばくちを厳しく戒めた。「これまでにないスケール」と強引にカジノを推進する安倍さんと、ばくちを禁じた二宮さんは大違いだ。安倍さんの「IR」は決して愛アールではない。これは国民を不幸にする落とし穴の「OR」でアール。