暇工作「課長の一分」


「ブラインド保険」

 本紙面で取り上げられてきたから、本紙読者なら自動車の「ブランド保険」をご存じだろう。

 この保険は自動車メーカーと大手4社が共同開発した3年更新の長期分割自動車保険で、特徴を一言でいえば、車体の傷とか凹みなど軽微な損害の無料補償がセットになっていて、本来ならクレームで保険金請求すれば3等級下がる契約が、この保険を利用すればそのままセーフになるという「サービス」がついているというものだ。
 メーカー・デーラー・大手損保が、グルになって一般代理店を締め出し、保険業法で禁止されている「利益供与」を武器に顧客を囲い込もうとするルール違反濃厚な保険であり、商法だ。
 K代理店も被害を受けて怒っている。
 「保険そのものだけの問題じゃないですよ。デーラーは、この保険に入っていただけば下取り価格を数万円高くしますとか、販売価格を値引させていただきます、などとユーザーを誘うんですね。一般代理店には決してできないサービスです。そりゃ、お客さんにとっては、この保険の方がはるかにお得です。私ら一般代理店はお手上げです。先日も長年の契約者から、Kさん、悪いね。長いお付き合いなのに…という、お別れ電話がありましたし…もう、前途真っ暗ですわ」
 金融庁は「個別具体的な情報や証拠がないと判断できない…」などと歯切れの悪い対応をしている。自分が認可しておいて、なにをいまさら、だ。 損保をいままで支えてきた国民代表の代理店は踏み台か。自動車メーカー・大手損保に金融庁が組めば、そりゃ、敵なしだろうが、まじめな一般代理店をつぶして、果たして損保は国民のための損保たり得るのか。
 契約者だって目先の自動車保険の損得だけを考えていればいいのか。メーカーに支配されてしまう事態に疑問符をつけるべきじゃないのか。
 金融庁のあいまいな対応には、もうひとつの背景がある。実は、このブランド保険、大手4社それぞれが、後ろめたさからか、あまり声高に宣伝していない。だから、そんな保険があることを知らない社員だってたくさんいる。つまり、みんな目隠しをされているから、金融庁も怪しげな対応ができるのだ。
 「ブランド保険」とは、「ブラインド保険」がなまったネーミングだろう。