斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

     「バカッター」は社会の責任

「バカッター」と呼ばれる愚行が横行している。「バイトテロ」ともいう。
 最近だけでも「くら寿司」の店員がゴミ箱に捨てた魚を調理してみせ、「セブン‐イレブン」の店員が口にほおばった白滝をおでんつゆに戻して、それらの動画がツイッターなどに投稿した事実が発覚した。
 5年ほど前に「ローソン」の店員がアイスケースに寝そべっている様子をフェイスブックに上げて騒がれて以来、事態は悪質さを増すばかり。
 信用を失った店側の被害は甚大で、訴訟沙汰になるケースが少なくないが、このままだと、あの手の連中はいつまで経ってものさばり返る。
 店側にも反省すべき点が多々あるはずだ。なぜなら、きちんとした責任者がその場で監督していたら、「バカッター」は難しい。
 商売の最前線を無責任ゆえに安く使える若者だけに委ねるドケチ根性が、事態の一因になっているのではないか。
 とすれば無茶な24時間営業を強いるフランチャイズ契約そのものが見直される必要が生じる道理だ。
 加えてSNS万能社会である。誰もが自分の思いなり考えを、世界中に発信できるシステム自体は素晴らしい。だが、その責に見合う自律心を備えた人間がどれほどいるというのか。逆にSNSのせいで、人間が本来、最も大切にしなければならない部分を欠落させた「バカ」が増えすぎた。
 条件がこれだけ揃えば、こうなるのも当然。子どもたちのいじめ、ネトウヨ…みんな同じ構図ではないか。こんな状況を放置していたら、さほど遠くない将来、私たちの社会は内部から溶解してしまう。
 「バカッター」の主たちを非難するのはたやすい。だが、あれらは現代社会が産み落とした排泄物だ。
 まだ完全に手遅れにはなっていないに違いないと無理にでも思いつつ、少しは真っ当な時代を取り戻す努力を始めていこう。