損保ずいかんろく


孤独死と損保  保険でカバーできないもの

                          松久 染緒

誰にも看取られず自宅で亡くなる「孤独死」が日常になりつつある。国による孤独死の定義はなく全国の件数も明らかになっていない。65歳以上の孤独死の推計(ニッセイ基礎研)では、自宅で死亡し、死後2日以上経過した「孤立死」は、2万6821人にのぼるという。
 高齢者の孤独死は、生前に身の周りの衛生管理や他人との交流が欠落している場合が多く、尊厳が保たれた死とはいえない。まずその定義を明確にし、原因や背景についての実態調査が必要で、そのうえで地方自治体や警察などとも連携しながら対策を講じる必要がある。
 
 リスクのあるところ損害保険ありで、損保各社もすでに「孤独死保険」を販売している。主として賃借人の孤独死によって家主(オーナー)が被るリスクをカバーする「事故対応等家主費用保険」(損保ジャパン日本興亜)の内容は、賃貸住宅内で死亡事故(孤独死、自殺、犯罪死)が発生した場合の逸失家賃、清掃費用、遺品整理費用、葬祭費用等を補償する。そのほか「家主費用・利益保険特約」(三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保)では、遺品整理費用として最大10万円、敷金を超える清掃・修復の原状回復費用として最大100万円、事故後に借り手がなく空室となった減収分として賃料の80%を最大12か月支払う。「家主費用・利益保険」(東京海上日動)でカバーされるものもある。
 
 家主の損害への補償は保険でそれなりに得られるが、肝心の孤独死したご本人の尊厳はどうすれば確保されるのか。「寄り添う」のは言葉だけ、他人や弱者への思いやりなど端からない、分断された社会では、孤独死を発生させないための対策も置き去りにされていないか。