斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

  韓国の小説「羞恥」を読む

  あけましておめでとうございます。…と、素直に喜べない新年が、いったいどれだけ続くのでしょう。 でも、ボヤいているだけではどうにもなりません。無理にでも気を取り直し、張り切っていかないことには。 読者の皆さんは、このお正月休みをどう過ごされましたか。私は思うところがあり、一冊の本を手に取りました。  チョン・スチャン著、斎藤真理子訳『羞恥』。みすず書房から昨年8月に刊行された、韓国の小説です。  物語は3人の脱北者(経済的困窮などの理由で北朝鮮から脱出した人々のこと)を軸に展開されます。韓国に渡った彼らはいずれも、亡命の途中で家族を失うという共通点を持っていました。  過剰なまでの罪悪感を抱きながら、それでも懸命に生きる男たち。折しも平昌五輪の選手村建設に沸き、経済至上主義も極まった町で、朝鮮戦争の際に虐殺されたらしい大量の人骨が発見されて――。  なみの日本人には想像もつかない、あまりに苛酷な生。〈北朝鮮出身の両親をもつ作家が韓国社会を凝視し、衝撃を放った小説〉だと、カバーの内容紹介にあります。  それで考えました。私たちは好むと好まざるとにかかわらず、南北朝鮮のことをよほど深く知る必要があります。が、報道だけでは理解できない部分が多すぎる。ならば小説を読めばいい、と。  北朝鮮国民の内面にまで踏み込んだ作品があると最高なのですが現実的には難しい。とはいえ翻訳された韓国のものだけでも目を通しておくのと、おかないのとでは、私たちの物の見方や価値観は、ずいぶん変わってくるのではないでしょうか。実は私のところには、出版社が送ってくれた韓国の小説が何冊かあります。この機に〃積ん読〃を卒業して一気に読んでみよう。  そんな思いをめぐらしたお正月でした。今年もよろしくお願いいたします。