雨宮処凛の「世直し随想」

            氷河期世代に確かな支援を


  バブル崩壊後の就職氷河期にブチ当たった「氷河期世代」が、「人生再設計第一世代」と名付けられて数カ月。正社員になれなかった人の多い30代半ばから40代半ばの苦境は20年以上放置されてきたが、やっと光が当たりそうだ。

 

 8月末、そんな氷河期世代を巡るニュースが世間をにぎわせた。それは兵庫県宝塚市のある取り組み。氷河期世代を対象に3人の正規職員を募集したところ、全国から1800人以上の応募があったという。

 倍率は実に600倍。応募は北海道から沖縄までの全国からあったという。10日ほどの募集期間だったにもかかわらずそれほど殺到したことに、中川智子市長は「それだけ多くの人が支援を必要としていることを実感した」と述べた。

 

 氷河期世代は1700万人。うち400万人が非正規もしくは無職とされる。今、政府はやっとこの世代の支援に乗り出そうとしている。

 氷河期世代の一人として思うのは、「あと10年早ければ」というじくじたる思いだ。そうすれば私たちはまだ30代で、いろんなことをやり直せた。もしくは20年前、氷河期さなかに正規職につけるような支援が充実していれば、私たちの人生はまったく違ったものになっていただろう。

 

 この20年、自殺したり、うつになったり、ホームレスになったりする同世代を多く見てきた。若い頃には「すぐやめる」「働く気がない」など若者バッシングの餌食になり、若くなくなれば「自己責任」と見捨てられてきた氷河期世代。支援が掛け声だけで終わらないことを祈っている。