そんぽ随感録 「かんぽの不正とそんぽ」

ノルマは廃止したが…


                                                   前田 功


  かんぽ生命およびその販売を担当する日本郵便㈱の不正について、先月号で述べた。その続きである。(先月号以前を読んでいただく場合は、このページの右上の「アーカイブ」を、スマホの場合は右上の横棒が3本並ぶマークをクリックしてください。)

 

 7月末、日本郵便㈱(郵便局)はかんぽ生命の不適切販売への批判を受けて、保険ノルマの廃止を打ち出した。数年前から、日本郵便㈱は年賀はがきの販売で非正規を含めた従業員に1人1万枚とかのノルマを課し、自爆した従業員がそれを金券ショップに持ち込み、安値で販売されるという事態を招いていた。世間の激しい批判を受けて、その年賀はがきのノルマは昨年12月に廃止された。その時、従業員の間では、「ノルマは年賀はがきだけじゃない。自爆させられるのは物品販売が多い。」と言われていた。この物品販売のノルマもこの8月、廃止と報道された。

 

 ブラックと言われてきた郵便局の職場は、これでホワイトに変わるのだろうか。(日本郵便㈱は、2016年にブラック企業大賞「特別賞」および「ネット投票賞」を受けている。)

 

 日本郵便㈱の横山社長の出身母体、ノルマ経営の本家、三井住友銀行でも個人営業についてはノルマを廃したという。それも影響しているとは思うが、これらの決定が、世間の批判を受けて、仕方なく行われている感じがする。従業員からの悲鳴がネットに投稿されたことによって、世間が知ることになったわけだ。経営陣にするとネットに投稿さえされなければこうは叩かれなかったという思いがあるのだろうか。社内の事柄を「ネットに投稿することを禁ずる」という通知を出して、それがネットに流され、さらなる批判を招いている。 

 

 郵政グループ(日本郵政㈱およびその傘下の日本郵便㈱、かんぽ生命、ゆうちょ銀行)の役員一覧を見ると、大企業の役員出身が目立つ。郵政は、国民の共有財産と言われる巨大な資産を抱えている。その資産とそれに絡む利権に大企業が群がっている感じがする。

 

 わが損保業界からはかんぽ生命の社長植平光彦氏。彼は2013年東京海上の執行役員からかんぽ生命の常務になり、その後専務→2017年社長となっている。この植平氏の前任社長は損保ジャパンの副社長から転じた石井雅実氏だ。さらに東京海上の社長・会長を務めた石原邦夫氏が2015年から日本郵政㈱の社外取締役に入っている。

 

 民営化以降、初代の西川氏から現在の長門社長まで4代、郵政社長の人事は政治に翻弄されてきた。菅義偉官房長官が民営化当時、郵政民営化担当大臣だった経緯からか、「郵政は菅の天領」という話もある。損保出身の人たちについても、どういう経緯でこの人事が決まったのだろう。表の話、裏の話、聞きたいものだ。

 このような経緯を考慮すると、たとえ横山氏や植平氏が「こうするのが国民・顧客の期待に応える経営だ」と考えても、出身企業や大物政治屋の思惑から、自由な意志決定はできないのではないかと思う。

 こういう人事のやりかたから正す必要がある。